ピアツーピア(P2P)によるファイル共有ソフト「Winny」の開発者が逮捕されました。様々な論点を含む事件です。自分用のメモも兼ねて論点をザッとまとめておきます。整理できていませんが。
★著作権について
ブログでも様々な意見が見られましたが、例えばHSKI'sさんは「著作権は侵害しないのが正論」とされています。まさに正論ですが、ただ著作権自体についても、ここで再度考える必要はあるかもしれません。
この問題で鋭い指摘をしていたのが、2年前のNHKスペシャル「変革の世紀 ”知”は誰のものか ~インターネット時代の大論争~」(2002年7月14日放送)です。アメリカ合衆国憲法成立にかかわったトマス・ジェファーソンは「知識はみなで共有すべきものであり、すべての人が自由に使ってこそ文化や化学の進歩につながる」と訴えました。この知識の共有財産という考え方が「パブリックドメイン」。ジェファーソンは当初の著作権法で著作権期間を14年とするのに最後まで悩んだそうです。しかしその後、産業育成・国策として著作権保護が強化され、米国ではほぼ一世紀に及ぶまでに期間が延長されました。しかしネット時代を迎え、著作権自体が見直されるべき、という主張が生まれます。番組中では、開発用のプログラムをネットで公開して発展したリナックスの例を挙げ、パブリックドメインとインターネットを結びつければ高い創造性が生まれる可能性を指摘していました。
★違法コピー流通の実情
ただし、今回の事件はこうした理想論を展開するのがためらわれるような暗部も抱えています。2チャンネルのユーザーが違法なファイルも交換することを意図したような、開発者によると見られる掲示板への書き込み。そして実際に利用者が共有していたのは、「映画や音楽などの複製物や児童ポルノといった違法なものがほとんどだったのが実情」(ITMedia)という点です。この点から逮捕を「歓迎」する声も少なくないようです。
かつて自分も関係者を取材した「FLマスク・リンク事件」を思い出します。ソフトの開発者も違法になるのか、またリンク自体が違法なのか等の重要な論点を含む事件でした。しかし、アダルト画像を修正するソフト、という印象ばかりが先行、しかも開発者とユーザー間のメールのやりとりが幇助罪についての認定で重視され、本質的な議論が十分されないまま有罪判決が出てしまいました。
★新技術・ソフト開発それ自体が罪になり得るとすれば。
今回の事件では「P2Pの芽が摘まれてしまう」という声(ITMedia)など、P2Pという技術の将来への悪影響が懸念されています。また、ファイル共有機能を持つソフトはこのほかにもメジャーなものを含め多数ありますし、極論としては、ウィンドウズやマックOSXといったOS自体がファイル共有の機能を持っています。ファイル共有が罪になるとしたら、マイクロソフトやアップルも罪になる?また、データ共有がいけないなら、インターネットそのものが否定されるのでは?という声もあります。この点について、今回は発信源特定が難しいWinnyの特徴が問題視された面もありますが、そうすると匿名性確保が罪なのか?ということも検討されないといけないでしょう。
コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は今回の摘発について「P2Pは重要な技術だが権利侵害を防止する措置を講じることなく応用すれば、悪用されることは明らか。開発・配布者にも一定の責任が生じる」とするコメントを発表しました。「権利侵害を防止する措置」というのは実現可能なのでしょうか。
例えば、このブログを見てもわかるように、インターネットは新技術・ツールの登場を繰り返して活性化し、発展してきました。今回の摘発がそうした新技術開発の意欲にブレーキをかけてしまわないか。そういう懸念はあります。
※このほか参考文献
・小倉弁護士「Winnyは『中立的な道具』」(ITMedia)
・容疑者の供述「自分がやったことと法の考えがぶつかってしまったので逮捕は仕方がない」(日テレ)
・ほぼ日刊イトイ新聞・留守番番長「知的財産は、使うためにある。」
・ジェトロ「電子商取引の法的課題」 「人々の倫理上のそして相互の理解、さらに環境の改善の為、アイデアは全世界の人々の間に自由に飛び交うべきである。」トマス・ジェファーソン
※上記NHK番組を見た視聴者の反応例
・G-ZONE「パブリックドメイン」
・ミッキーマウス保護法と呼ばれる法律
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